Twitter社の経営再建には何が必要なのか

Twitterが経営難により身売りを検討しているらしい。普段からTwitterを使う身としては気になるので、現状を浅く調べるとともに、彼らは今後どうするべきか軽く考えてみる。

Twitterは間違いなく世界有数の製品だ。一部の人にとってはもはやインフラと言っていいくらい深く浸透している。よほど下手な変更をしない限り、この価値が揺らぐことはそうそうない。
MAUで抜かれたと言って話題になったInstagramも素晴らしいが、ソフトウェアとして解決する課題が違うので直接比較してもしょうがない。

さて、何が問題なのかを探るためにまずはTwitter社のIRを見てみる。

https://investor.twitterinc.com
https://investor.twitterinc.com/annuals-proxies.cfm

まずは、アニュアルレポートのプレゼン資料から。

http://files.shareholder.com/downloads/AMDA-2F526X/2986819348x0x894615/08C76359-8553-4F7A-8678-A7D946DAF55F/Twitter_Annual_Presenation.pdf

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-10-09-12-00-27

売上は2013年から6.65億ドル、14億ドル、22億ドルと伸びている。かなり順調じゃないか。日本の上場企業で2200億円規模の売り上げを出しているのは東宝、千葉銀行、静岡銀行、スクエニ、ミニストップなどであり(参考:上場企業 売上高ランキング)、グローバルIT企業として十分大きくはない。

次はMonthly Active UsersとARPU(ユーザ一人当たりの広告収入)。

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-10-09-12-02-03

両方とも完全に伸び悩んでいる。2014年Q3からこの調子なので、2016年は売り上げ自体も伸び悩むことが予想される。

一人当たりの毎月の広告収益は1.51ドルということで、みんなが150円払ってツイッターを使っているのと同じだけの広告収入がある。感覚的には妥当な水準だと思う。

プレゼン資料ではなくアニュアルレポートも見てみよう。

http://files.shareholder.com/downloads/AMDA-2F526X/2986819348x0x886152/3FBBB0EC-FDF0-41D2-9C4E-A06AE8B1D1E5/2016_Twitter_Annual_Report.pdf

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-10-09-12-09-43

純損失を見ると、2013年からマイナス6.45億ドル、マイナス5.77億ドル、マイナス5.21億ドル。毎年売上高に対して大きな損失を計上してきたことがわかる。売上に対する純損失率は2013年はほぼ100%、2015年でも約40%。

Research and Developmentは主に開発のための人件費に由来するらしい。8億ドルの費用。仮にこれが社員は3898人いるので半数がエンジニアだとすると2000人。単純に割ると一人4000万円のコスト。実際の給与はもっと安いと考えるとシリコンバレーのトップ企業としてはあながちおかしな水準でもないのかもしれない。また、セールスとマーケティングにも8.7億ドルかけている。

費用の総計は26億ドルということなので、開発とセールス・マーケティングがその多く(17億ドル)を占めている。

バランスシートも見てみよう。

%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%b3%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%83%e3%83%88-2016-10-09-12-13-53

2015年末時点での総資産は64億ドル。負債総計が20億ドルとあるのでまだ44億ドル程度は純資産があったということだろうか。そう考えると経営的に存続がすぐヤバイというわけでもなさそうに見える。このままマイナス5億円が続いていくと10年持たないけど。

ここまで浅く決算資料を見てみたが、問題は大きく「純損失が大きいこと」「MAUとARPUが伸び悩み売上が停滞しそうなこと」の2つだろう。

ただ確かに赤字は大きいが、身売りを考えるほどではないという印象を持った。素晴らしい製品を持っているので、エンジニアとデザイナー中心の素晴らしい企業文化を長期的に作っていければ、そんなに経営が難しい会社ではないように思える。

現実的に考えると、彼らが業績を改善するために取れる戦略は3つしかない。

  1. コストの削減
  2. ツイッター自体の収益性を改善する
  3. ツイッターをベースをした間接的なマネタイズ

まず、コスト削減について。

まず、4000人も社員が本当に必要なのだろうか。以前レイオフもしていたが、エンジニアが半分だとしても2000人もの技術者が必要なのだろうか。

他の事例を見てみる。インスタグラムは買収される時の従業員数は13人(3000万ユーザー)。WhatsAppは9億人以上のユーザーに提供するためのメンバーが50名。どちらも極端に少ない例ではあるが、どちらも世界的に稀な成長を遂げたサービスだ。

赤字のサービスに2000人もエンジニアがいるのは明らかに多すぎる気がする。せめて、エンジニアとデザイナー中心に1000人で運用することはできないんだろうか。レイオフやばいけど。

セールス・マーケティングに使われる8.7億ドルはどうだろう。収益の柱が広告なので、世界中にセールススタッフが必要なのはわかるが、妥当な投資額なんだろうか。これは正直全くわからない。比較の対象があればいいんだろうが、面倒なので今回はやめておく。

次に、Twitter自体の収益性を伸ばすことはできるだろうか。これは具体的には「ユーザー数を増やすこと」「ARPUをもっと高くすること」に尽きる。ただ、現状すでにここに注力して失敗しているように見える。何よりこの点に関してTwitter社の人たちが俺より考えてないはずがないので、やはり難しいんだと思う。

そこで考える価値があると思うのは3つ目のTwitterをベースにした間接的な収益化である。

すでに、彼らはデータのライセンス提供などは行っているようだが、自らそれを活用するソフトウェアを開発して企業に提供することはしてなさそうだ。

直接的に比較することはできないが、Peter Thielが投資していることで有名なPalantirはすでに17億ドルの売り上げを記録しているそうだ

Palantirは大量のデータを分析するソフトウェアを政府や金融界などに売るスタートアップ。大量の”社会的なデータ”を保有しているTwitterなら、同じようにしてデータの活用するための組織向けソフトウェアを作ることは不可能ではないはずだ。

犯罪者があらかじめツイッターに書き込むことは少なくないだろうし、消費者向けの製品を持つ会社はマーケティングに役立つ情報が手に入るなら喜んで投資するだろう。

データのライセンス販売による売上があることはアニュアルレポートに書いてあるが、そんなことよりも自分たちでデータを活用するための付加価値を持った製品を開発した方が儲かるんじゃないか。いつも思うのだが、いわゆるビッグデータというものは活用の方向性が定まらない限り全く意味をなさない。

我々スタートアップ業界側としては、Twitter上のデータを利用した「犯罪予見ツール」なり「マーケティング分析ツール」などを開発できれば、買収してもらえるかもしれない。